2021年6月12日土曜日

BLACK BIRD

久しぶりの映画

飯食って間に合う映画を調べたらこのBLACK BIRDがあったので見ることに

サイトを見ると「死ぬことを決めたリリーのその日の前に集まった人々の物語」とのこと

うーん、メンヘラ系のはあんまなぁ…と思いつつ見ることに


なんの気無しに選んだ作品だったけど、これは大当たりの一本だった。

安楽死がテーマになるのでそれなりに重い作品なのだが説教じみることも説明じみることもなく描ききったと思う

COVID19が蔓延してしまい、罹患して最期を迎える人は家族に会うことも家族の温もりを感じることも出来なくなってしまったわけなのだが、最期は家族に囲まれて温もりに包まれてその時を迎えることを望んでる人は多いんじゃなかろうか

そんな理想の死を迎えたいと思ったリリーは何ヶ月もの話し合いを重ねて安楽死を選択し、家族との団欒を楽しみ家族が帰ったあとに致死量の睡眠剤を飲み最期を迎えることを計画した。

長女のジェニファーと夫のマイケル、その息子のジョナサンが到着する。
続いてリリーの親友で家族とも長く親交があるリズもやってくる。
最後に次女のアンナかパートナーのクリスを連れて到着する。

母の死を目前に控えギクシャクしながらもその日のディナーを迎える。

皆、ひとりの人間の安楽死をどう迎えていいのか分からず、ただそれでも母の希望に沿うように努力を重ねるが誰しもがそうであるようにそれぞれがそれぞれの問題を抱えていた。

安楽死と言う非日常を前に平静を装っていたが、やがて細かな衝突やすれ違いが始まってしまう。

【あとはネタバレになってしまうので、ネタバレがいやな人はここまで。】



てか、なにより驚いたのがジェニファーがケイト・ウィンスレットだったこと!
タイタニックを経て美人になってた気がしてたんだけど、美人のオーラは隠しきり見事なまでに生真面目で気忙しいおばちゃんを演じてた!

主演のスーザン・サランドンも意思の強くシニカルさもあり自分の死を選んだリリーを熱演してた。

死を扱うもんなんで、やはりお涙頂戴的な展開もあるんだが所々にコミカルな部分を入れてきて悲しくなりすぎないように丁寧に脚本が作られてたね。

あとは何よりお家が立派!
海辺に建つ一軒家で調度品もおしゃれ!おしゃれ過ぎて生活感を感じない!!!
その生活感を感じさせないのは安楽死と言う非日常を描くためにあえてなのか、あっちの富裕層は普通にああいう生活しているんだろうか?

雑感はこれぐらい。

前知識なしで見るのが好きなので、映画の情報だけで読み解くとリリーは急速に悪化する病気らしい。最初、左麻痺を表現してたから脳血管性で半身麻痺なんかな?と思ってた。そしたら途中で「数週間後には食事も出来ない、呼吸も出来なくなる」とのこと。
筋ジスかな?と思ったけど公式サイトでは病名は明示されてなかった。パンフレットにはALSと載っている様子。そっか筋ジスは若年発症だった・・・勉強不足。

それは兎も角、ALSを病み器械に(作中でも機械ではなく器械と訳していた)繋がれることは望まずに、「自分が最後に出来ることはこれしかないの」とリリーは話していた。
安楽死の難しいことは、安楽死を選んだ人の意見が安楽死を望まない人への批判に繋がる可能性があることだ。

リリーは半身麻痺を負いつつも起き上がること、着替えること、階段を降りることなど自分が出来ることは自分でやろうとする。当然のことのようだが、周りの人からしたら危なっかしいし手伝いたくなってしまう。
だが、リリーはそれを断固として拒否する。夫のポールも「母さんは手伝われることがイヤなんだ」とジェニファーを諭すシーンがあった。

安楽死を望む人の気持ちの中に「誰か(特に家族)の重荷になりたくない」と言う気持ちが含まれていることは容易に想像がつく。
では、逆に安楽死を望まない人は「誰かの重荷になることを望んでいる」のだろうか。決してそんなことはないんだと思う。もっともっと根源的な死への恐怖、生への執着なんだと思う。
安楽死を考える時に必ず通らなければならない議論の余地なのではないだろうか。

作中では家族への負担を嫌うリリーの姿を自立心が強い人として描いていた。
だがそんな彼女も最後の時を目前として「怖いわ・・・」と呟いていた。
自身で出来る最後の決断、自分らしく生を全うする決意、悔いのなかった人生、愛する家族との時間、そして旅立ち。
そのリリーに対し、一体何と返せばいいのだろうか?いや何かを返す必要があるのだろうか?

リリーがその時を迎え、集まった家族、親友は家を後にする。
そして家の電気を消し、ポールは散歩へ出る。散歩から帰って来てからポールは警察へ電話するはずだ。
だが映画はそこで終わる。
この映画はリリーの最期を迎えるまでの映画だ。亡くなった後を描く必要はない。
安楽死をテーマにしながらも、逆説的に生きていることを描いた作品なのだ。リリーが最後の眠りについた姿はスクリーンに登場しない。これはリリーが生きている人生を描いた映画なのだからリリーが生きている姿しか必要なかったんだろう。

最後に「ブラックバード」と言うタイトルの意味。
米英語ではムクドリモドキって鳥のことらしいが、それも特に暗示的な意味は持たないっぽい。
黒人に対する蔑称であるがこれも当てはまらない。
映画の中で特徴的に黒い鳥が扱われたシーンもない・・・
タイトルの意味はなんのかイマイチ不明。元の作品はサイレント・ハートだしそのままの方が良かったのでは??
アメリカでもタイトルの意味は分かってないらしい・・・

あと邦題の副題の「家族が家族であるうちに」も意味不明だよな
家族崩壊が控えてる家族ならまだしも、別に家族崩壊してないじゃん?
妙な副題つけてお茶濁すぐらいならタイトル自体を変えちゃえばいいのに。
配給会社も制作側にタイトルの意味確認したけど誰も分らなかったんだろうな~
なんかの暗喩だったらやばいからタイトル変更する訳にもいかないし、思わせぶりな副題で煽ったろ~~ってなったんだろうな
まあ「難病女性の死の数日間」みたいな説明副題よりはマシっちゃましだな

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